
メトロイドヴァニアやローグライクのように、特定の大人気ゲームに強い影響をうけた作風がひとつの派生ジャンルとして扱われています。
ヴァンパイアサバイバーズもそのひとつです。ヴァンサバ自身はローグライトという位置づけですが、このゲームに近いものはヴァンサバライクと呼ばれています。
ゲームプレイを断片的にみるとプレイヤーが全方位に攻撃する場面ばかりでゲーム性がうすそうですが、プレイヤーはどのような楽しみを見出しているでしょうか?
今回も筆者の主観をベースに書き残します。
Vampire Survivors
https://store.steampowered.com/app/1794680
知識に基づくリスクリターンの決断
開発者はカジノゲームの経験があり、まさにそのような派手な画面効果がこのゲームの特徴に挙げられます。しかしそれだけが魅力ではありません。
ゲーム性という観点からいうと、リスクとリターンを天秤にかけて決断してく決断の連続です。
まず、経験値の集め方。敵を倒すとその場所に経験値ジェムを落とし、それを拾うことではじめて経験値を獲得できます。
遠くから安全に攻撃し続ければ敵は倒せますが、それではいつまでたってもレベルアップできません。どこかのタイミングで敵の群れに接近し(リスクをとって)経験値(リターン)を得る必要があります。
敵の動向を観察し、拾いにいくかどうかを決断する。これがこのゲームの最小単位のゲーム性といえます。
また、レベルアップ時には3つの選択肢から獲得アイテムをひとつを選ぶ必要があります。アンロックされているものからランダムに選出されますが、その本質は「既存アイテムをパワーアップされるか」と「新たなアイテムを手に入れるか」の2択です。
基本的には同じアイテムをパワーアップしていったほうが強化幅が大きい設計です。一方で新規アイテムは一期一会の側面が強く、チャンスを逃すと永遠に取れなくなるかもしれません。
つまり、新規アイテムを手に入れることは目先の苦戦という「リスク」をとって後半に「リターン」を得るという意味合いになります。逆もまたしかりです。
時間経過による敵の出現パターンは固定なので、その知識を元に深さを取るか幅を取るかの決断をします。「もうすぐラッシュタイムが始まるからここは既存アイテムの強化にしておこう」といったぐあいです。
決断を補強する新要素
ゲームに慣れて基本的な決断がすぐにできるようになると、それに合わせて様々な要素が追加されることで長時間のプレイも飽きないようになっています。
例えば、武器の進化要素。武器と相方のアイテムを揃えることで武器が大幅にパワーアップし、クリアまで敵を倒し続けられるほどの威力をもつようになります。
どの武器とアイテムが対になっているかの知識をもとに集めるわけですが、武器とアイテムのセット装備が強制されることになるので武器同士の相性がより複雑になります。
場合によってはアイテム単体の性能を目当てに進化を諦める決断が必要になります。これもリスクとリターンといえます。
また、新アイテムをどんどんアンロックして好きなアイテムの抽選確率が低くなっていくのにあわせてスキップや選択肢削除という新要素も解禁されます。
多すぎる選択肢から狙ったアイテムを手に入れやすくするための処置ですが、ここでも「ベストではないがとりあえずの強化をするのか」と「ベストのためにしばらくの苦戦を受け入れるのか」という決断を迫られます。
ほかにもキャラクター自体についているパッシブスキルやアルカナ要素など、あらゆるものが決断に影響をあたえています。
無害な意外性
ゲームプレイが常に同じで予測の範囲内になると単調になります。例えばアクションゲームで上から岩が降ってくるパターンしかないとすぐに飽きてしまうでしょう。
そこで、たまにに下から間欠泉を吹き出して意外性をもたせることで面白さを長続きさせるといった対策をするのが一般的です。
(そのような中でも「岩→岩→間欠泉」を1セットにして繰り返すといった広義のパターン化をすることで想定内と想定外をうまく制御します)
とはいえ、予想外のことでプレイヤーに危害を加えているというのは根本的にはストレスなのかもしれません。ヴァンサバの宝箱システムはこの部分に切り込んでいると考えています。
宝箱を取ると普通はアイテム1個のパワーアップですが、運がいいと3個や5個のアイテムをパワーアップしてくれます。それだけですが、これがまた面白いです。
1個しかパワーアップしないと思っていたところに複数個パワーアップしたらそれだけで意外ですが、それに味をしめて「今ここで3つ出てくれ!」と願って1個だけだったという期待外れも起きます。
このような意外性・予想の裏切りをしてプレイヤーの感情を揺さぶりますが、パワーアップは1個が基本なので根本的には害を与えているわけではありません。まさにエンタメです。
◯◯ライクを手掛ける意味とは
さて、ここからはおせっかい・お説教です。
「理解するつもりがないなら放っておいてくれよ」と思ったことはないでしょうか?私自身は陰キャ側なのでそのようなちょっかいをかけられて傷ついたことがあります。
それを踏まえて何が言いたいのか。◯◯ライクゲーをつくるとき「世間ではこういうのが流行りで受け入れられるんだろう?」という上から目線で表面をなぞっただけのゲームはそれと同じではないかと思います。
ここに書いたヴァンサバの魅力はあくまで私なりの一例です。ゲームを遊んで何に感銘を受けたのか、どこに改善の余地があるのかを自分なりに考える。ゲームをモデルにしているように見えて実は自分と対話をしている。◯◯ライクという同じ体裁でありながらそれぞれに個性があるのはそれが理由ではないかと考えています。
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