剣と理念は貫いてこそ

剣と理念は貫いてこそ

誇りと逃げ口上は紙一重

 コンセプトを定めることはゴールを明確に定めることであり、プロジェクトの完遂率や完成度を高めるのに有効です。
しかし、使い方を誤ると逆に自分の本音をくらませてしまい、的外れな施策を繰り返す大義名分にもなってしまいます。

 極端な例ですが、「私はつまらないゲームを作るのをコンセプトにし、その通りにした。コンセプトを果たしたのに、なぜ評価されないだろう?」とは言わないでしょう。
しかし、奇をてらうことを最優先にしてゲームとしての掘り下げを一切せずにリリースしてしまうケースはありえます。
また、複数要素を混ぜたゲームに関しては「要素Aが機能不全になっている」と指摘されたときに「それは要素Bのために必要」と反論し、「要素Bが機能不全になっている」と指摘されたときには「それは要素Aのために必要」……と、言われたことに対してくるくると手のひらを返して反論するのに使えます。
一見すると正しいようですが、「複数要素を混ぜる」という根本のコンセプトを実現できていません。
さらにひどいのは、何かしらの指摘をされたときに思ってもいないコンセプトをその場ででっちあげ、「コンセプトのためにはそれを聞き入れる必要はない」と反論する場合です。
このような時は、自分の心をかたくなにするためにコンセプトを悪用したと言わざるをえません。
あからさまな誹謗中傷のように無視するべきものもありますが、妥当な指摘まで突き放すのであれば、成長は難しいでしょう。
(すべてのゲーム制作者が成長すべきかというと話が脱線するので、本記事は貪欲に実力や実績を追い求めている人を対象にしています)

 コンセプトを明確に定め、それに応じた仕様を決めていくプロセスを3段階に分けて紹介します。
・コンセプトを決める
・コンセプトを果たす
・コンセプト由来の問題点をケアする

コンセプトを決める

いきなり身も蓋もない話に聞こえるかもしれませんが、落とし穴になりやすい箇所です。
コンセプトとジャンルを混同するとうまくいきません。
最近ではオープンワールドやローグライクといったジャンルのゲームが注目されていますが、マップをやたらめったら広げればオープンワールド、敵や地形をランダム配置すればローグライクとして分類上の要件は満たしています。
しかし、それで面白くなるわけではないということは肌感覚でわかると思います。ランダムだから面白いのではなく、それによって”様々な可能性をケアしながら現状を分析し、判断を下す”のが面白いのではないでしょうか。
まさにこの部分、”最終的な遊び方”こそが定めるべきコンセプトです。具体的な仕様はそれを実現するための手段です。
自作品にどのような感想が来てほしいかを考え、そこから逆算して各種仕様を決めるというのも有効なやりかたでしょう。
拙作「サルベージ・ザ・コア」においては、”敵の動きや地形を覚えてパターンを組む”というのが最終的な遊び方、コンセプトになります。
(実際のところは、ジャンプの軌道が不自由なものを作りたいというのが最初にあり、それを通用させるものとして覚えゲーという方向性を決めたので卵が先か鶏が先かわからなくなっているのですが)

コンセプトを果たす

コンセプトを決めたら、それを実現するための施策をうちます。
ダブスタ(ダブルスタンダード)という言葉を聞いたことはないでしょうか?言っていることとやっていることが違う人は印象が悪くなり、怒りを覚えることさえあります。(正確には、相手にあわせて複数の主義主張を使い分けることを指すのですが)
ゲームも同じように、コンセプトに反する仕様があれば印象が悪くなります。
サルベージ・ザ・コアにおいては、プレイヤーの機動力が普通のゲームより劣っていることをふまえて敵の性能も落としています。
動かない敵が一定のリズムでショットを撃つだけ。動く敵はHPが低く、ショットと移動を両立しているものは終盤の強敵扱いといったぐあいです。
これにより、プレイヤーは敵の動きを観察する余裕ができます。
”敵を覚えるゲーム”と言っておきながら、覚える隙を与えずに襲いかかってボコボコにしてはダブスタになったことでしょう。
同じように、覚えるゲームと言ったからには覚えきれない量のマップを出すべきではありません。
セーブ地点を区切りにし、次のセーブ地点までの距離を10画面程度に抑えることで一度に覚えなければならない量を抑えています。
このように、コンセプトを明確にすることで敵の性能やマップの広さといった各種要素を芋づる式に決めることができます。
また、操作を少しづつステップアップするために探索式という体裁をとりましたが、これによりアイテム全回収や最低限クリアといった複数の遊び方が生まれました。
それを踏まえ、クリア時にアイテム全回収していれば「PERFECT!」最低限であれば「GREAT!」という特別なテキストを表示して対応しています。
すでに実装した要素も定期的に見直し、掘り下げられる場所は掘り下げておいたほうがよいでしょう。

 多くのゲームでありがちな要素をなぞる場合でも、それによって得られる効果を理解し、筋を通すべきです。
例えば、RPGのエンカウント方式はランダム式とシンボル式の2種類が主流です。
ランダム式の場合は一度のダンジョン突入で深くまで潜ろうとすると帰還までに戦う回数も増えていくため、欲張ると全滅します。逆に低層で往復すると安全ですが、時間がかかります。
そのリスクを踏まえてどのタイミングで帰還するのかを判断する楽しみがあります。
シンボル式の場合は敵と戦うかどうかをプレイヤーの意思で決められるため、リスク管理よりも自由度を優先した方式といえます。
もしもシンボル式を採用しておきながら不意打ちの強制エンカウントばかりだったとしたら、それは腹立たしいダブスタになりえます。
わけもなく人の頬を叩いておきながら、「なぜか彼は不機嫌になってしまった」と不思議がってはいけません。筋を通さないゲームとはそのようなものです。

コンセプト由来の問題点をケアする

得点を増やすための施策と失点を防ぐための施策は両輪であり、片方だけに偏ってはいいものができません。
サルベージ・ザ・コアは覚えゲーとして作った副作用として、短時間でたくさんゲームオーバーになる作りになっています。これはテンポを悪くするおそれがあります。
そのため、3秒程度でゲームを再開できるようにしてケアしました。ゲームオーバー演出が3秒という意味ではありません。HPが0になった瞬間から次のプレイヤー操作ができるまでの時間を全てあわせて3秒程度です。
さらに、タイトル画面のカーソルがデフォルトでコンティニューに合っているので、決定キーをひたすら連打していれば誤操作せずに最速で再挑戦できるようにしました。
 このようなリトライのスムーズさは他のゲームでも必要な場合があります。
無数の試行錯誤が必要なパズルゲームや、正しい操作をしたうえで物理演算の機嫌がよくないと進めない場合など、短期間で大量のリトライを求められる場合はリトライのたびにちょっとした暗転をはさむだけでもテンポを悪くしかねません。
こういったものはリセットボタンを押した瞬間に1フレームでパっと戻るのが最適といえます。
「そういうゲームに作ったから仕方ない」で終わらせず、できるだけストレスを減らす工夫を凝らしましょう。

 いかなるコンセプトも、それを果たすためには基礎の実力が必要不可欠であることは常に意識しなければなりません。
例えば、苦手な人でも楽しめるカジュアルなものをコンセプトにしたとします。
その場合は、人一倍親切丁寧であることが求められます。作りの粗さからくる操作性の悪さや不親切さがあればコンセプトを反故にしています。
まさか、相手の無知をいいことに粗雑さをごまかそう、騙してやろうというつもりで初心者を対象にしているわけではないでしょう。
ゲームが得意な人を対象にするなら、ゲームに造詣が深い人でも満足できる妥当性の高いシステム・ゲームバランスが求められます。
初見でもわかる決まりきった最適解をこするだけでクリアできてしまう浅いゲームでは一瞬で見透かされてしまいます。
破綻したゲームを高難易度と称しておけば好意的に解釈してくれるだろうと甘えてもいけません。

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 筆者作のフリーゲーム「サルベージ・ザ・コア」の制作後記を発売しています!
記事内の内容と被っている可能性もありますが、一つのゲームに題材を絞ってより具体的に考えたことをまとめました。活動応援をよろしくお願いします。

ゲーム  https://otokam0510.itch.io/stc
制作後記 https://booth.pm/ja/items/5169932

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