手応えはどこからくるのか

手応えはどこからくるのか

※参考用のアニメーションはこちらご参照ください→ https://www.nicovideo.jp/watch/sm43191732

 カジュアルに楽しめる仕様ならゲーム性が出せない分を手応えで補う……という言い方を何度かしましたが、実際のところは全てのゲームで手応えは必要です。
しかし、ばくぜんとしていて具体的にどうすれば手応えが増すかは人のセンスによるものが大きく、まだまだブラックボックスといえます。
ひとつ傾向がいえるのは、プレイヤーの入力に対してどれだけの応答を返すことができるかということです。

 例えば、同じ100円で買えるとしたら350mlのジュースよりも1000mlのジュースを買えた方がお得です。コスパがいいですね。
同じように、同じボタン操作でもより多くの応答が返ってきたほうが好まれます。ボッタクリ価格の商品が売れないのは当たり前のことです。
たとえフルプライスでもフリーゲームでも、それを遊ぶ際にボタンを操作する労力や消費する寿命は同じなので安さを売りにするのも限界があります。
それでは、入力に対してより多くの応答を返す実例をみていきましょう。

 まず、敵を剣で攻撃した場面を例にします。
剣が敵がに触れ、ダメージを表す数字が出ているのでゲームとしては十分に状況を説明できています。しかし娯楽としては足りていません。
そこで、剣に振りかぶりや後隙を追加したり、敵にヒットポーズを追加してみました。”手応えが増した”と感じられると思います。
ボタンを押した瞬間に攻撃判定が出ている前者では懐中電灯をつけるような雰囲気ですが、アニメーションを凝ることで”剣を振り回して敵を殴る”というニュアンスがわかりやすくなっています。
前者の場合では斬撃エフェクトを追加してもそこまで手応えは増えず、エフェクトだけを増やしてどうにかしようとすると今度は視認性に問題が出てきます。
ボタンを押してから攻撃判定が出るまでにタイムラグができる都合で多少は難易度が増すかもしれませんが、それに合わせて敵の動きを鈍らせて帳尻を合わせればいいのでカジュアルゲームにも問題なく適応できます。
タイミング命なリズムゲームといった極端なものを除いて、一般論的には実装が面倒くさい以外でためらう理由はありません。

 動きにおいても抑揚を使って見栄えを豪華にすることができます。
同じ時間で同じ距離を移動する場合においても、初速が速くてじわじわ減速するような動きにすれば抑揚ができて見栄えがよくなります。
ジェット噴射や爆発などで一気に加速したものの、空気抵抗によってブレーキがかかる……そのような物理法則を印象づけられるためです。
難しい理屈はさておくとしても動きに変化があって映えます。
短距離ダッシュや爆発で飛び散る破片といったありがちなシチュエーションに適応できるので積極的に使っていきましょう。
実は先述のダメージ表記も抑揚をつけています。
画面端まで届くようなショットにおいてはゲームバランスに大きくかかわるので注意が必要です。

 キャラクターが撃ち出すショットも重要です。
1枚絵だけではどうしても固形物に見えてしまい、ハリボテの印象を受けます。
2コマでもアニメーションさせておくだけで印象は大きく変わります。

本筋とはそれますが、マグマなどの流体もアニメーションの対象です。
1枚絵では個体ブロックと見分けがつかず、レッドカーペットと勘違いされるかもしれません。
流体を表現するためにスクロールさせてみたり、ポコポコと吹き出す泡を表現するにはアニメーションが必須です。
これもまた、面倒くさい以外にためらう理由がありません。

そうです、面倒くさいのです。面倒くさいというのがやらない理由になりえてしまうのです。
人の可能・不可能には
・簡単にできる
・面倒くさいができる
・どうやってもできない
の3パターンに分けられます。
できないことに関しては、たらればを言っても仕方がありません。簡単にできることに関しては、どれだけやっても優位は取れません。
面倒くさい領域にどれだけ踏み込むかがクオリティを底上げする鍵になります。
個人、あるいは小規模チームであれば自分に決定権がある場合が多いと思います。
理不尽な上司が不可能を要求し、それができなければやる気だなんだと罵倒してくるようなことはないでしょう。そのようなことがないのでパラダイスです。
しかし、それを甘える口実にし、ついつい”面倒”にカテゴライズすべきものを”不可能”に送ってしまいがちです。そして最後までやらないままリリースしてしまうのです。

 他人に対してはいくらでも誤魔化しが効きます。自分の本音を塞ごうと思えば塞げます。
情熱を自称するならば、野心的な目標を掲げるならば、あまつさえ自作品が評価されないことに不満を漏らすなら……
どのようにして自分の情熱を証明することができるのでしょうか。自分を律し、作品のクオリティで示すほかありません。

 話が脱線しました。
このように、一見するとゲームの本質ではなさそうなアニメーション周りを凝ることで印象を良くできるケースがあります。
太鼓を叩くとなんだか楽しい。しかしそれは音の他に手の感触からも影響を受けています。
基本は聴覚と視覚だけのゲームにおいて楽しさを追求するのなら、そのハンデを補う努力が必要です。

——

 筆者作のフリーゲーム「サルベージ・ザ・コア」の制作後記を発売しています!
記事内の内容と被っている可能性もありますが、一つのゲームに題材を絞ってより具体的に考えたことをまとめました。活動応援をよろしくお願いします。

ゲーム  https://otokam0510.itch.io/stc
制作後記 https://booth.pm/ja/items/5169932

報告する

コメント

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。