香狐かおるアドベンチャー制作後記:リーダーシップについて

香狐かおるアドベンチャー制作後記:リーダーシップについて

はじめに

本記事は”Vストリーマーファンゲーム 香狐かおるアドベンチャー”の制作後記になります。
ゲーム内のキャラクターデザインには実在するVtuberの香狐かおる 様が含まれています。
香狐かおる Lit.Link https://lit.link/kakokaoru

 作者はゲームの全てを知っています。謎解きの答えだけでなく、それに至るまでの細かいフラグ管理の内訳も把握しています。
無数のテストプレイを経て細かい挙動も知り尽くしており、キャラクターを思うがままに動かすことができます。
しかし、そのような開発の過程で得た知見は開発者の特権であり、プレイヤーは知りません。
この知識のギャップを埋められないことが不親切なゲームになる原因になりえます。
 私達が社交ダンスで組もうとしている相手は長年の親友ではありません。その日会ったばかりの人です。
しかも、その人にアイマスクをつけた状態で踊ります。「これくらい察してくれ」が通用するはずがありません。
本記事では便宜上、ゲームの内部事情を開示するための工夫を「リーダーシップ」と名付けて紹介します。

予備動作

 リーダーシップの基本として、動作前の振りかぶり(予兆)を意識して実装しています。

 例えばスタン。本作はムチを敵に当てるとしばらくスタン状態になりますが、体が青くなりながら回ることでスタン中であることを表現しています。
さらに、スタンが解除される0.5秒前になると回転はそのままに青色だけが戻ることでスタン解除の予兆にしています。
スタン中の敵にぶつかる直前でスタンが解除された場合でも、予兆を知りつつあえて突っ込んだのであれば諦めがつきますが、いきなり解除されては理不尽に感じます。

 定期的に方向転換するハチやコウモリについても、転換前にブレーキがかかることで予兆にしています。
開発初期ではハチを踏みつける直前に方向を変えてひらりとかわされる事態が多発していました。
具体的な移動距離を把握している開発者ですらそうだったので、そのまま公開したときにプレイヤーが感じる理不尽さは計り知れません。
その他、床から針が飛び出すトラップには穴から針がのぞく予兆フェーズを設けたり、ショット系の敵も歩行アニメを工夫して予備動作にしています。
(余談ですが、刃を撃つ敵の予備動作時にアニメにあわせて前に動かして足裏の整合性を保っています)
第ニボスが滑空する際にも翼を振りかぶる動作があります。

エフェクト

 本作は敵を踏みつけたときに軽くジャンプするときと大ジャンプするときの2パターンがあります。
大ジャンプ時は通常時よりも高い効果音を鳴らし、煙のエフェクトを出すことでジャンプの種類を一目瞭然にしています。
こんなことをしなくても挙動の違いを観察すればわかるかもしれませんが、それは何気ないアクションにいちいち神経を尖らせることをプレイヤーに要求するということです。

また、方向転換時にブレーキポーズ、効果音、エフェクトを出すことで移動に慣性の概念があることを印象付けています。
プレイヤーの入力に対する応答を増やすことはプレイの手応えを増すことにも繋がります。
エフェクトやモーションはゲームの本筋ではないということで優先度が低くされがちですが、ゲームの内部処理を提示する手段として非常に有用です。

 最終ボスは火の玉ラリーを3回してから踏みつけるという複雑な工程になりますが、それも提示できるように工夫しました。
通常時には踏みつけが効かないことを提示するために風でキャラクターを押し返し、そもそも踏みつけられないようにしています。
それだけだと踏みつけられるタイミングでも踏みにいかなくなるおそれがあるので、攻撃チャンスのときはスタンモーションをするようにしました。
スタンすればあらゆる攻撃がキャンセルされることをそれまでのゲームプレイで経験しているので、今は踏める状態であることを示唆できます。

コイン誘導

 コインは基本的には得点アイテムであり、腕に自信のある人が寄り道ルートにあるコインを集めることでプレイヤースキルをスコアに変換するのが本来の使い方です。
一方で、これをうまく配置してプレイヤーを誘導する応用技も古くから行われてきました。

 複雑なゲームにはどうしてもチュートリアルが必要ですが、本作は左右移動と2ボタンしかないドシンプルなルール。プレイ時間もスムーズにいけば10分程度と小規模なものなのでチュートリアルをはさんで本編開始が遅れるのは割に合わないと判断しました。
しかし、ムチは敵をスタンさせるだけで倒せないという変わったシステムがあるため何も説明しなければ敵を一切倒せないものだと誤解を受けるおそれがあります。
もしくは、ムチを当ててから踏む2工程が必須と受け取られるかもしれません。
これを解決するために最初の敵配置はこのようにしました。

 ムチが届かないようにブロックで距離をとり、ジャンプの軌道をコインで示唆。通常状態で踏みつけるように誘導しました。
ムチ自体はあからさまな攻撃モーションなので説明をしなくても敵に試してもらえると期待しています。
また、ムチを当ててダッシュできるフックも最初はキャラクターと同じ高さに設置して、とりあえずムチを当てられるようにしました。

 こちらは上下移動するリフトに沿ったコイン。
コインを集めようとするとリフトの上でしばらく待つことになるので、その間に噴き出す火の玉の周期を進めてジャンプする前に火の玉の存在を知れることを期待しました。
初見の火の玉に当たって穴に叩き落される可能性をできるだけ低くしようという試みです。
今思えば火の玉にも予兆があったほうが望ましいですね。反省。

 縦に並んでいるコインを取るためにジャンプをするとちょうどよく敵を踏めるような配置もしてみました。

 このようなコイン誘導をするときに絶対にしてはいけないことは、プレイヤーを騙すことです。
ゲームを作っていると悪ふざけで誘い込んで穴に落としたくなりますが、それを一回でもやると他全てが正しい誘導だったとしてもプレイヤーは常に疑心暗鬼になりながらゲームをするはめになります。
このような配置を他人から指摘されたときに、いじめっ子が言いそうな反論をするのではないでしょうか。それとも、鬼畜ゲーであることを事前に周知していたのでしょうか。
罠を仕掛けるにしても、ゲーム内の敵キャラがプレイアブルキャラクターを倒すために仕掛けた舞台設定と開発者の悪意だけが先行したものとの違いは正確に察知されます。

 これらの施策はどこまでいっても開発者が想像して行っているもので、本当の客観視にはなれません。うまくいった部分もあれば、完全に的はずれなものもあったと思います。
しかし、プレイヤーを想定して作ったものと何も考えずに作ったものとでは、その時点で大きな差になりえます。

追記:
 実際のプレイヤーがどのように感じたり動いたかのフィードバックを得るうえでプレイ動画はとても参考になります。
サルベージ・ザ・コアは実況配信の縁がありましたが、リーダーシップの不備が浮き彫りになりました。
本作は攻撃力の高いミサイルで先手必勝していくのが基本戦術で、しかし全ての敵にミサイルを使うと弾切れになるため脅威度の低い敵はライフルで対応するという取捨選択やパターン構築を前提に設計しています。
しかし道中でのミサイル使用率が想定よりも大幅に低く(ほぼ0)、プレイヤーをライフルオンリーという厳しい縛りプレイにいざなってしまっている結果となりました。これは開発者が念の為テストしてクリア確認しているだけの、理論上可能レベルの異常な難易度です。
そのため想定通り積極的にミサイルを使ったうえでの難易度がどうだったかは計測できず、難易度設定の良し悪しは結論が出せない状態になっています。
ミサイルの価値に気づけるかも攻略過程の一環ではありますが、ゲーム側がミサイルの有用性をアピールする必要があったといえます。

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