足裏で床を磨くモーションは第一印象を壊滅させます

足裏で床を磨くモーションは第一印象を壊滅させます

はじめに

※参考用のアニメーションはこちらご参照ください→ https://www.nicovideo.jp/watch/sm43162231

 ゲーム制作をする際、見栄えに関してどれくらいの優先順位を設けていますか?おそらくはゲームの本体ではないため優先されることは多くないと思います。
私自身も(恥ずかしい話ですが乱暴な口調で)そこまで凝るものではないだろうと発言したことがあります。
しかし、”比較的”優先しない方針だとしても最低限は抑えておかないと全体のクオリティを損ねる原因になりうると最近は考えています。

 例えば、全ての人間がファッショニスタとしてのオシャレ感性を持っている必要はありません。
しかし、スーツで仕事をする一般論的な企業の面接に行く際に私服を着、目ヤニがついたままでいることはふさわしいことでしょうか?
外見ではなく中身が大事だと言われても、TPOをわきまえず初めて会う人と信頼を築く努力をしない姿勢を見せつけては中身にも問題があると疑われてしまいます。
また、恋人とデートするときには3日前に食べこぼしが付いたままの服を着たり寝癖を直さずに会うでしょうか?
愛があればいいのでしょうか?自分のせいで連れ歩く恋人が恥をかいていても知らんぷりするのであれば、愛を主張しても説得力に欠けます。

 では、ゲーム制作における”身だしなみ”とは具体的にどのような点に気をつければいいのでしょうか。筆者の主観を元にいくつか考えてみました。

基本編

 まずは待機モーション。これがいわゆる「足裏で床を磨くモーション」です。
この動きを真似してみてください。そのためにはできるだけ滑りやすい靴下を用意し、フローロング等のツルツルした床でやる必要があると思います。
そして真似してみると、30秒も保たずに股関節が悲鳴をあげるでしょう。それだけ不自然な動きをしているということです。

 修正すると。足裏の位置が固定されて違和感がなくなったと思います。

 何かしらのアクションをさせる場合、軸足(固定している足)の概念を意識してみましょう。

 悪い例として出したアニメーションも、それに合わせてキャラクターの座標を動かすことで違和感なく見せることができます。
ゲーム上でどう動かすのかを十分に見据えてから必要なものを逆算するとよいでしょう。

 これらの動きは「自分の意思で足を動かして移動したもの」というニュアンスになります。
外部からの力を受けて受動的に動く場合は逆に足裏を滑らせることで効果的に映ります。
転がってきた岩を受け止めたり、人力ではなく手に持った剣が推進力を生んで敵に突っ込んだりと、ゲームでありがちなシチュエーションも多いので能動・受動の描き分けができると表現力があがります。

応用編

 キャラクターの移動に慣性をつけている場合はもうひと工夫が必要になります。
まずは普通に作った例。スティックを離した瞬間に立ちポーズに戻り、慣性で少し進んだものです。

 そこで、慣性で移動している間は専用のポーズを追加してみました。
基本的に、慣性で滑っている間はプレイヤーからすれば「ちゃんとスティックを離したのに勝手に動いている」という入力と応答のギャップでストレスを受ける状態になります。
専用のポーズを表示することで「ゲームはプレイヤーがスティックを離した事をちゃんと認識している」という応答を返しつつ、「勢いが余っている状態」であることの説得力を持たせられれば納得感によってストレスの軽減を期待できます。
実装する場合はキャラクターの現在の座標と1フレーム前の座標を比べて移動方向を算出し、スティックの入力と実際の移動方向の差に応じてアニメーションを切り替えるという考え方になります。
2D横スクロールであれば移動方向は右・左・静止の3パターンだけなので単純な大小で済みますが、3Dであれば三角関数を使いましょう。

 走りアニメーションについては”走り 3コマ”といった簡単なキーワードで検索すれば優れた手引きがたくさん見つかります。
裏を返せば、ノウハウがこれだけ広く公開されて誰でもできるはずの要素であり、うまくできても当然、至らなかったら印象悪化という減点方式の基準で判断される箇所なので注意が必要です。
 移動と攻撃が自由にできる場合は、立ちや走りといったアニメーションに攻撃時・非攻撃時の差分をつくり、自然に切り替える必要があります。立ち状態で攻撃してから移動すると足裏が滑ったり、移動中に攻撃した直後に止まると足踏みするといった不自然な挙動があると無意識下で印象が悪くなります。
特に攻撃アニメーションが複数コマある場合はツールのアニメーション管理機能が対応しておらず自力で実装しなければならない場合があるので開発リソースと要相談です。

リソースを余分に割り振ってでも手に入れたい価値

 これらの要素は拡大解釈すれば、新人フリコンの公式Youtubeチャンネルで啓発されている「最初の”つかみ”」の一環といえます。
たった5分では、ゲーム内の武器やシステムを使いこなしたスタイリッシュプレイはできません。
たった5分では、最悪の第一印象だった新キャラがかけがえのない仲間になっていく過程は描けません。
たった5分では、何気なく読み飛ばした伏線が意外な回収をされて思わず振り返ることはありません。
それでは、最初の5分でプレイヤーが触れるのはどういったものがあるでしょうか?スティックを傾けたらキャラクターが動く、ボタンを押したらキャラクターが攻撃する……こういった初歩的な挙動くらいです。
そうであれば、開発リソースを割く優先順位を上げる理由としては十分だと思います。
太鼓を叩くとなんだか楽しい。そのような根源的な面白さを追求するのも選択肢です。

 もちろん、ゲーム制作において唯一の判断基準は「面白いか、どうか」です。面白ければどのような仕様でも構いません。手段を選んではいけません。
しかし、「退屈な基礎工事を飛ばしたうえで高く評価されたい」というのも変に手段を選んでいる状態といえます。

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記事内の内容と被っている可能性もありますが、一つのゲームに題材を絞ってより具体的に考えたことをまとめました。活動応援をよろしくお願いします。

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