「見習い精霊術師の魔法陣」 制作秘話

「見習い精霊術師の魔法陣」 制作秘話

その1. 原案の「haguru」とは。

 エンディングのスタッフロールにも明記しているが、このゲームの原案は、シド=サクソンという方が考案した「haguru」というゲームである。ドイツゲーム・アナログゲームに分類される。
 このゲームの最大の特徴は、ルール(主に得点を得る方法)がプレイごとに異なっていること。そしてプレイヤー(通常は8~14人程度)には別々のルールの断片が配られていること、が挙げられる。
 その中でプレイヤーは互いに交渉を行いながら、自分の知らないルールを探り、得点の素となるもの(ポーカーチップやトランプ等、色々なものが利用できる)を集めて、得点を競うゲームである。

 このあたりの紹介ページが分かりやすいと思う。
 http://fuwa.o.oo7.jp/game/party/haguru/haguru.htm
 ※ヒットしくにいですが、プレイ動画を再現した動画も多少はネットの海に浮かんでいます。

 プレイしていただいた方ならお分かりだろうが、「見習い精霊術師の魔法陣」は得点を得るための魔導書の記述(ルール)が初めは明かされておらず、またプレイごとに異なる記述となっている。
 しかし一方で、原案の「haguru」にはあって「見習い精霊術師の魔法陣」にはないものがある。それは交渉だ。
 超高性能なAIをとりこんでゲームを作ったりするならともかく、基本一人プレイのフリーゲームでは、交渉のおもしろさを再現することは不可能だった。
 当ゲームの製作は、この「交渉」の代わりとなるものをどう組み込むかへの苦悩の歩みであったと言える。
 偉大なるゲームを考案したシド=サクソン氏に改めて謝意を送ります。
 
 

その2. 制作構想はここから始まった。

 前回では「haguru」がどんなゲームかを紹介させていただいた。このゲームを知ったのは、私がゲ制を始める身分になるよりずっと前。エロゲの『11eyes -罪と罰と贖いの少女-』(発売元:Lass)の中で行われていたのを見たときだった。面白そうと思い、色々なネット記事を漁った。プレイする機会も相手もないのに、プレイ用のルールカードを作って楽しんでいた。
 それから〇〇年が経過し、ゲ制を初めてもうすぐ1年になろうかという2022年4月15日のMoLaらいぶ(実況:Mola様 & LoVeRie様)を拝聴して、チャット欄に色々と書き込みをしていたときのことだった。
(下のライブ画像のチャット欄を参照)

 これをきっかけに、なんとか「haguru」をゲーム化できないかとの試行錯誤が始まった。一方で、みなみよつば様主催の「ツクール夏フェス2022」に何とか作品を応募したいと思っていた私は、構想を具体化できずにいた「haguru」でなく、「採掘王」の制作の構想が固まってきたので、そちらの制作に移ることになった。
 こうして「採掘王」の制作をしながら、少しずつ少しずつ構想を固めていくこととなるのであった。

もららいぶ:https://www.youtube.com/watch?v=tF_zKONridI
ツクール夏フェス:https://www.youtube.com/watch?v=HoglrRucBf8&list=PLcBBxl1NgUzibAtlm5UTGDhixk57pitvO&index=8&t=474s

その3. 色々な意味でヤバいゲームになりそう・・・。

 初めはまず、「haguru」をそのままゲームに落とし込むとどうなるか考えてみた。
 オープニングと、コモンルールカード(haguruがどういうゲームか説明する文書が記されたカード)を表示。
 その後所持ルールカードとチップの表示。
 自動で交渉相手が順番に表示され、ルールカード交換、チップ交換等を選択する。
 10人と交渉したらタイムアップとなり、終了。得点計算。
 スコアアタックで順位を競う。
 ルールカードは画像表示?文書表示?
 ルールは何パターン作る?(どうせ何度もプレイされる自信はないから、10種類ぐらいゴリラ実装でよいか・・・?)
 初級はルールカード手放しても、一度入手していればいつでもルールが確認できる。現在所持チップで、現時点で判明しているルールでの暫定得点計算結果が表示されている。
 上級だと、手放したルールカードは見れないし、暫定得点も表示されないが、ゲーム終了時にボーナス点がもらえる。
 (実装できるか不明)
 
 これだと初めは単純にルールカード交換で情報増やした方が得になるので、初めの方にルールカード交換をするとマイナス点を付与する。(交換した相手を有利にしてしまう側面もあるので。)逆に後半はチップの交換比率を不利にする。(こちらが3枚放出で2枚しか貰えない、など)

 なぜこんなカードゲームをやってるかという背景は、返済不能に膨れ上がった借金をチャラにするために、一夜限りのギャンブルクルーズに参加した・・・みたいな?
 タイトルは「haguru」と、アウトローな感じの「はぐれ者」を混ぜて「ハグル者」

 「haguru」の交渉の面白さが再現できないので脳内ボツになった。

その4. 作品イメージがようやく現在の「みなまほ」に近づいてきたが。

 上記案をボツにしてから色々と思考した。考え直さなければならないことは山のようにあったが、まずは世界観だ。
 世界観を重視するというほどではないが、物語に説得力がないものは製作者として興が乗らないタイプである。
 (プレイヤーの時はさほど気にしないのだが・・・)
 そこで取引・交渉という観点から、商人主役案を考えてみた。
 国王が特殊な宝石を買い集めるという情報を元に王国までやってきた一人の商人。手元には何色かの宝石があるが、できれば少しでも高く買い取ってくれる宝石を入手したい。登城の日まで後10日。主人公はライバル商人たちから情報を得たり、手元の宝石を交換したりして、少しでも宝石を高く買い取ってもらおう。
 ここまで考えて、これでは宝石の基本点となる部分はともかく、ボーナス点の説明がつかない。
 それならばと、取引を宝石でなく、魔法石としてみた。魔法の媒体としてなら、特殊な組み合わせで高値で買い取ってもらっても不思議ではない、という理屈だ。
 しかしそれなら、商人である必要がないという考えに至る。魔法使いの方が自然であろう。
 そこで、魔法学校の卒業試験まで後10日。実技試験に必要な魔法の媒体となる宝石を集めて試験に挑もう!! という感じになった。同級生たちと情報を交換したり、図書館で情報を得たり、購買で魔法の触媒となる宝石を買ったりして、最終的に高得点となる宝石の組み合わせを集める。
 ここまで来て、ようやく「見習い精霊術師の魔法陣」の世界観に近い感じのものとなった。
 しかしながら、「Haguru」本来の交渉のおもしろさの再現には、まだ少しも近づいていないのであった。

 脳内情報を垂れ流しただけなので、今回は特に画像はなし。

その5. 断念することで1歩前進・・・?

試行錯誤を続けた結果、交渉の面白さを再現することを断念。
2022年10月24日。ツイッターのDMで折尾楽太郎氏に、「haguru」のゲーム化断念を伝えた。当ブログ、その2のチャット欄で「haguru」ネタで盛り上がっていた理解者であり、同志である。
完成までの間延々と私の愚痴を聞かされることになろうとは、この時の折尾氏はまだ知る由もなかった・・・。
(嘘です。そんなに多くは愚痴ってません。)
 そこで方向を「haguru」の再現から、モチーフ化へと路線変更。
「haguru」のプレイスタイルの一つに、色鉛筆haguruというのがある。開始時に渡されたイラスト付用紙に色を塗ることで得点になる。塗り方と得点についてはルールカードに描かれており、色鉛筆も交渉による交換材料となる形式だ。
 これを利用して魔法陣に色を塗る形式のゲーム案を考えつく。
 魔法学校の卒業試験まで後10日。限られた資金(予算)を基に、より強力な魔法陣を描くというスコアアタック式ゲームだ。
 とにかく本来であれば、序盤にルールを入手して、ルールが把握できたら得点を稼ぐというのがプレイヤーが目指すべき流れだが、交渉相手や競争相手がない以上は、そのままの仕組みでは単なる1本道になってしまう。序盤にルールを入手することの不利益、終盤に高得点をとるための色鉛筆を入手することの不利益。この二つがなければゲームとしてのバランスが成り立たない。
 そこで導入したのが資金という要素だ。序盤ほど魔導書(ルール)の値段が高く、逆に終盤ほど精霊の加護(色鉛筆)を得るための寄付金が高くなる仕組みだ。
 ただこれだけでは、運要素の強いパズルゲーという、つまらなそうなゲームになってしまう。
 この時点では、面白そうになるイメージがまだ少しも沸いていないのであった。

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